欧米には「肩をたたく」「肩をもむ」といった習慣はないと聞きます。日本では多くの人が精神的ストレスや疲労、姿勢不良などによる「肩こり」に悩んでいます。
日本人に肩こりが多い理由は、日本人は頭の大きさに比べて、頭を支えている首の骨が細く、周囲の筋肉に過度の負担がかかっているからです。

肩こりの原因はさまざまで、急性のものでは寝違えや頸椎捻挫など、慢性のものはストレス、姿勢異常などにより起こる「頚部変形性頚椎症」や「椎間板ヘルニア」などの頸椎を構成する部位の何らかの異常、また、「顎関節症」がその原因になっていることもあります。最近では過度のパソコン操作によって生じる「テクノストレス眼症」によるものも話題になっています。

頚部の異常だけでなく、内臓の異常が肩こりとして現れることもあります。例えば、狭心症や心筋梗塞では左肩、胆のう、肝臓の障害では右肩の肩こりが発生します。
肩こりに関連するのは、頭を支えたり上肢を体幹に繋いでいる筋群で、なかでも中心的役割を担っているのが僧帽筋です。僧帽筋は広い範囲に付着している筋肉で、この裏側を流れている静脈には弁がなく、しかも静脈の分岐が多いことから血流不全に陥りやすいのです。

肩こりに悩んでおられる患者さんでは、肩から肩甲骨の内側に沿って押さえると、響きを感じる部位（トリガーポイント）を見つけることができます。ペインクリニックでは、このトリガーポイントへの局所注射によって、筋肉の緊張が取れ、こりを伝えている神経が和らぎます。さらに、頚部に存在する交感神経の集まりで、血流を調整している部位でもある星状神経節に対してブロック注射を行い、縮んでいた血管が開いて血流がよくなり、筋肉が柔らかくなります。